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= 時 々 の 記 =

[日々逍遥]
こちらには 「時々の記」 をWEB版として掲載しています。

色 即 是 空    空 即 是 色    色 即 是 色


「色即是空」

宮崎は「巨人が来ると寒くなる」 定説違はず春キャンプ発つ
縁といひ絆と言ふも他人はひと 吾は我がまま十人十色
いい時代に生きたのかもねと友ぽつり 桜舞はせて春の青空
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寸胴(ずんどう)の太きを持ちて友来る おでんがよしと大蔵大根
夕立が土煙り立てて攻めて来る 走って逃げた少年のとき
植木屋が近所の松の古葉揉む 梯子 三脚 総勢掛かり
嵐の連休 四国に在りと子のメール 穏やかならば楽しきはずを
ふと気付く 店のガラスの横姿 思はず背筋がすっくと伸びる
=============================P6=
音もせで白きカーテン閉めしまま 主無き家の師走つごもり
うあショック! 身長マイナス一センチ 背筋伸ばして顎(あぎと)を引きて
改札のハサミの音も懐かしき お出でませんか宮崎の旅 (手改札)

歳をとると月日が経つのが早いと言ふ
  あっといふ間に日が暮れて えっといふ間に年の瀬が来る


この遊園かのリゾートも色失せて史跡のごとく苔むしてあり
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正月の餅は搗かずに買はうよと 老いの手抜きも年々拍車
その子二歳 畑打つ側にしゃがみ居て 不思議のごとく団子虫と遊ぶ
怒らない 君も あなたも怒らない 器量? 寛容? 達観? 超越?
喉元を 過ぐれば熱さ何とやら 丸呑みする人の多きこと多きこと
得意げに 三輪車漕ぎて孫走る 大きな親子が後追ひかける(父・祖父)
=============================P8=
髪切った カッコ良かろと孫の写真 爺に送れと聴かぬとメール
子等と共にママ友連れて娘来ぬ さながら大き託児所の体
西の空にイプシロン消ゆるを待ちわびて 都井の岬の馬追ひ始まる
謝 謝 感謝 山桜の花も菜の花も 歩けども歩けども吾が散歩道
野火消えて人影消えて音消えて 何無きごとく日は西傾ぐ
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遠ざかる かのまほろばの儚さや 「時間」(とき)といふ名のブラックホール
去年今年アバウトが佳し除夜の鐘 花火はきっちり零時にドドーン
正月を通夜で行き会ふ戸惑ひや 無口のままに目礼交はす
垣根越し「お早うございます!」と大き声 隣の親爺っさん今朝上機嫌
お早うとか有り難うとか済みません 声を出すのが似合はぬ時代?
=============================P10=
言葉なんて古びたツールは鬱陶し 隣の君ともスマホの指話で
若くても 大悟 達観 坊さまは 行って来たよにお話しなさる
盂蘭盆会 父は東に子は西に 駆け足 掛け持ち 坊様多忙
住所録 物故の印増えゆけど 消すをためらひ後ろに残す
蝉集く 無住の寺に読経流る 派遣の若僧いや熱さうに
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寄らば大樹 迎合 雷同おらが波 善し悪し形振り構はず見らず
耳遠く 話の中に入れぬ老い 座敷の隅に新聞めくる

寸馬豆人 昔 浅草十二階 スカイツリーは いま雲の上
 ※寸馬豆人(スンバトウジン)=遠くに小さく見える人馬。特に、画中の遠景の人馬をいう。


無茶苦茶な論理も仏の御意の中 善人?なほもて往生すれば
そこそこの交はりの友病みて伏す 見舞はば或ひは怪しまるべし(不告知)
=============================P12=
松村さん 松浦さんに上村さん 村松さん?も妻の友達
お孫さん? 少子化ゆへの脚光か 会ふ人ごとに「あっら可愛い!」
孫四歳 補助輪外しふうらりと バランス危ふし支へ手離せず
孫預け 友と買ひ物へ行く娘 落ち着かざるらし電話ちょこちょこ
子ら孫ら 帰りてゆきて夏閉ぢて 閑散として二人の夕餉
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昨日と今日の 境ひ目あたり秒針は 我関せずと 時刻んでゆく
新燃岳(しんもえ)は湖消して花埋め 頂き割りて火の煙立つ
二時間と百キロの距離隔つれど 新燃岳(やま)の空震 窓を揺るがす
雛山に新燃岳(やま)鎮まるを願ふと言ふ 人影まばら灰の降る街(雛山:えびの伝統雛飾り)
野いばらが俺達だってと春を競ふ 疎まれし花は白き無垢色
=============================P14=
老人(おいびと)の庭に停まったレンタカー千葉の息子ら来てゐるらしき
日進月歩 いえいえそいつぁあまう古い 今どき秒進分歩の時代  (50)
核シェルターそれはどこ向け? おや国内! 今なら格安内需元年
同窓会 はるか彼方のその日々を 昨日のごとく若きが集ふ
言ひたくも口に出だせぬ閊へあり 筋と情との胸の葛藤
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みんな死語「天職」「この道」「プロ」「職人」 規制緩和のボーダレスのと
ものひとつ言はむとすれば愚痴二つ 三つ四つ五つ押しくらまんぢう
何処へか 美し大和のアイデンティティー 隙間明かりを見せ来よ岩戸
恥も外聞も 無きが今日日のステイタス へたなプライド身を捨て致す
言ひ訳は簡潔が良し饒舌は かてて加へて惨めを呈す
=============================P16=
台詞よりBGMが幅利かす 主役そこ退け黒子が通る
生き生きと葬儀屋さんが駆け回る 炎天酷暑 天佑神助
我が振りは人の振り見て尚為(なほす)らし 短絡狂暴近時の習ひ
夕散歩 店のトイレで(おっ、ぬしも…) 老頭児同士が会釈でニヤリ
午前四時 やや遠慮がちのバイク音 新聞配達が朝告げてゆく
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「有り難う」漢字で書きてふと思案 そりゃあ無いよと言ってるやうで
知らなんだ!『納付・拒絶は“任意”』だと! 交通安全協会会費
飛行機雲やがて膨らみ少しづつ 青染みてゆくゆっくりゆっくり

クールビズ でもねえTシャツアロハシャツ?
ひとつ山越しゃホンダラッタホイホイ


イノベーション? PC 携帯 政党?も 未完成品跋扈(ばっこ)の時代
=============================P18=
三百六十五分一のレクイエム この日だけはと広島の映像
日本=東京 だといふ勘違ひ 被災地=福島 だといふ気づかぬ誤謬

“完全制御” 嘘も方便けせらせら 五輪が欲しい花いちもんめ
 (※2016五輪誘致:首相「福島は完全に制御」と)


皮算用 東京五輪の大風呂敷 青天井(あおてん) 底なし公共事業
子育て支援 産めよ増やせよ元気な子 お国の御為 富国強兵
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大義名分 多国籍軍協力と 海賊さまさまソマリアの夏 (警護派遣)
あの質疑この応答もカッサカサ 国会議事堂 乾燥注意報
梅雨深し帯と襷の絡み合い 迷走列島 安部飲み尽くす(アベノミックス)
不言実行い〜い言葉です黙々と「私」の思ひだけ着々実行
低コストそれが神話と誰も知り 誰も言はない原発論議
=============================P20=
ヒロシマがフクシマの陰に薄れゆく 二・〇・一・一 新たな惨禍
あの原発木造なのか! と 誰か揶揄 原子炉建屋の爆発画像
原発避難 賠償額に怒声飛ぶ 誘致補助金忘れしごとく
フクシマの子供の明日をお母さん “故郷”ですか“命”でせうか?
我が知らぬ はるか後の世の悲しみか 「福島原発賠償訴訟」
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現在(いま)はそれ影を潜めて他所の話 風浪静穏群青の海
過ぎし日の戦争(いくさ)の教訓(をしへ)薄れゆき 美化の声聞こゆ悲しき時代
「政」の字は合従連衡大わらは 幼きどちの陣取りゲーム
「決められる政治」をかしな言葉が幅利かす 脳裏を過ぎる「大政翼賛」
地震 津波 いつか納戸の奥の隅 床の間背負って原発鎮座
=============================P22=
オスプレイ逆立ちしてゐる野次郎兵衛 困ったもんだね傲慢過信
あちら様の内輪の事情と超寛容 謙虚 忍従 達観の国
誰かがそれを危険と言へば然りと息巻く 宜しと聞きて雷同した人
行く年や闇に霞んだ一里塚 駄馬に引かれてわが行く旅路
“商ひ”を君にも僕にも強ひる時代 算盤弾かず生くべからずと
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ふりがなを「ばか」と書きたくなりさうな
  「素直」といふ字が 掠(かす)れて見えぬ


本当に “予” めぢゃなく “余” り震? 誰も疑はぬ不思議な常識
危険路線 そこは措いとけネズミ捕り「絶対安全」ここがドル箱
ギーギーとブレーキ鳴かせ下るチャリ 追ひ越す車が横目で睨む
=============================P24=


「空即是色」

田に下りて 何の詮議か 群雀 頭上たわわに柿の実赤し
浜萱草(ハマカンザウ))紅き花咲く海の空 トンビふうはり日向馬ヶ背 (100)
まだ青き 南京櫨(なんきんはぜ)の木梢高く 郁子(むべ)五つ六つ色付き初めし
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薄黄花 土より出でてなほ清し 庭の奥隅 花茗荷生ゆ
ピクリとも木の葉動かで風止まる 猛暑日の午後の不気味な時間
山沿ひは雪になるぞとラヂオ言ふ まだコスモスの咲く年の暮れ
猛暑日をヘクソ蔓は風に揺れ 終戦の日のサイレン渡る
薄墨を刷きたるやうな空の色 傘を手に手に散歩人ゆく
=============================P26=
五つ六つカラス降り来て何突つく 寒風走るサッカーコート
晴れ間惜し梅雨の雨間のひと仕事 ヴァオンヴァオンと草刈り機唸る
堤防を犬に引かれて傘差して 多分あの影床屋の息子
気温未だ真夏にあれど日々日ごと 並木の木陰伸びる散歩道
寒いねと つい言ひかくる今朝の寒 台風一過秋を蹴飛ばし
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さわさわと木漏れ日揺りて風往きぬ 廃キャンパスの銀杏の並木
十時四十五分で止まる大時計 廃校舎の塔上じっと動かず
「JAZZ研究会」校舎の横の廃部室 若竹伸びて屋根覆ひたり
春だなあと恍(とぼ)けてみやうかこの霞 火山灰(はひ)と知らねば長閑けきものを
カラスウリ真っ赤に熟れてニュース早や 高千穂夜神楽始まるを告ぐ
=============================P28=
命享けて 春夏秋冬終(つひ)の章 空は水色花はくれなゐ
わが郷はインフル鳥フル火山灰(はひ)が降る 災害対応いまフル回転
雷雨激しく 暴れて去りて夜の庭 月影落ちてこほろぎ鳴くも
またゴーヤ… などと言っては不謹慎 今朝も有難〜く健康ジュース
そこもここもゴーヤ積み置く産直店 最近とんとチャヨテを見らず
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はつ夏の五月の朝の雨上がり 何か良きこと起こるの予感
ジャワ更紗すかんぽ揺れて風吹いて 夕焼け小焼けのチャイムが流る
特異日と言ひもするらし文化の日 晴天マークの並ぶ天気図
やぶ椿 やや控へめにやや小ぶり それでも凛と胸張ってゐる
北風は軒唸らせて夜を騒ぎ 空を澄ませて朝に凪ぎたり
=============================P30=
春はそれ駆け足で往き夏そこに 三々五々と鯉のぼり立つ
しとしとと今日を朝より五月雨れて 疾うに仕舞ひしベストを探す
萌え盛る 若葉の傍(かたへ)はらはらと「秋の色して春落ち葉舞ふ
西都原 風土記の丘の空青く コスモスの花古墳を埋む
八朔も九年母もたわわに実れども 採る人もなく枝撓めゆく
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雪積むと日々にラヂオがニュース告ぐ 然り大寒!暦が誇る
開かんとして開かんとして得開かず わが北窓の梅の小蕾
ホーケキョと弥生の森の奥の陰 薮椿の花揺れたるやうな
山風に耐へてけなげに薄紅を いや淡々とあけぼのつつじ
樹に透けて波光らする錦江湾 澄みて桜島間近に見ゆる
=============================P32=
四時四面 香らぬは無しこの日頃 金木犀の花芬芬と
柿もみぢ落ちて片方(かたへ)の空透かす 朝日に蜘蛛の糸光らせて
すすき覆ふ烏帽子の山にあけび生り 梅もどき咲き花蔓も咲き
夏草のまだ青々と茂る土手 やや戸惑ひつつ咲く彼岸花
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楚々たれど どっこい中々著莪(しゃが)の花 乾きし庭の隅に咲き継ぐ
蕾点々 膨らみ初めし梅が枝に 目白舞ひ来て糞して逃げぬ
うはっサブ! 瞬時の油断を見透かされ 風が帽子を奪って逃げた
特別に用は無いけど… 友の来て 温んだ冷茶飲み干して行く
孫らしき背高のっぽと散歩ゆく 隣りの親爺っさん連れ連れられて
=============================P34=
昔語りしてゐるやうな老樹なり 凛と城山の楠の大木
蝉が鳴く裏の赤子も止め処なく 声張り上げて猛暑日の午後
夏休みも水を流さぬウォーターランド「節水中」の立て看ぽつり
高千穂峰(みね)登山三歩登って二歩滑る 山頂遠し砂の9合目  (150)
椰子の実は流れて寄らず夏の日の 朝の浜辺を潮騒ばかり
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台風の掠めて過ぎて風止みて ただ耐へ難き蒸し暑さ残る
沖の海はいま時化るらし海鳴りに 紛れて夜汽車の音遠みゆく
カメラ立てて土手に座りて小半日 老爺 鴉の巣立つを待てり
残寒の愁ひを載せて弥生尽 横殴りの氷雨ガラスを叩く
五つ六つ影黒くして散歩人 風土記の丘の早朝の風景
=============================P36=
頬撫でて少うし優しく今朝の風 上着一枚脱がせて往きぬ
古事記編纂 千三百年 神々の 息吹き生き生き日向(ひむか)この年
百済王 伝説の悲話継ぐ音か ひむか高鍋 鴫野(しぎの)浦浜
冬の星座ラヂオが歌ふ遠き日は「ものみな憩へるしじまの中」と
なつかしき城山の鐘… と歌はれし その森にいま薮椿咲く
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田起こしの 赤き耕耘機追ひかけて 白鷺ぞろと列成してゆく
南風 窓より入りて窓へ抜く 風鈴の肩ぽんとたたきて
潮騒に耳を委ねて浜辺歩く 貝の欠片を蹴飛ばしながら
欄干の橋のたもとの寺の墓地 今日も老婆が花換へてゐる
土分けてむっくりどっかり秋茗荷 どうじゃ! とばかり胸張ってゐる
=============================P38=
ずくっしょ(法師蝉)はまだ鳴かぬねと言ひし夕 これでもかとてか庭に姦し
強情にしがみ付き居し蝉の殻 いま吹く風に舞ひて落ちたり
がさごそと音立てて舞ふ枯れ落ち葉 終の住処を探してるやうな
学び舎の正門に続く並木道 南京櫨(なんきんはぜ)はかの日のままに
耳鳴りと聞き紛はする虫の音か 二つ三つ四つ… 音源数多
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日溜まりを温としと思ふ朝なり 九年坊はまだ緑濃けれど
飫肥(おび)城址大手の門の坂の道 空の人力車とことことゆく
屋根を叩き壁蹴っ飛ばして何怒る 夜の雨風荒れてし止まず
秋色を刷きて台風過ぎて往き つくつく法師はいよいよ繁く
雨頻る尾鈴の山の登山口 紅葉狩りの横幕唸らせて降る
=============================P40=
菜種梅雨かすりもせずて菜の花は 痩せたその身に細き鞘着く
ハマボウは夏の河口の砂の島 あはく黄色く大き花して
残暑といふ九月の空の太陽が 背を炒るごとく追ひかけ止まず
夏落ち葉 往還の歩道掃く背より「プッ」と短きクラクション過ぐ
海はいまは基礎のみ残して消えし街の 向ふに凪ぎていや穏やかに
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掘割の氷柱したたる散歩道 目白がチュルルと囀り渡る
さて咲くか… ええぇっ?でも今日寒過ぎる… 梅も震えるこの戻り寒
風吹けど火山灰の降れども意ともせず 楚々と膨らむ梅の小蕾
浜萱草 寒くはないかこの師走 花開かせて蕾も付けて
彼岸花 紅きが咲きて土手覆ふ わが郷の墓は野畑の傍
=============================P42=
その男自販機の前うろうろと… 葛藤癒えて? 手に“お〜いお茶”
急げ急げ! 縦走ツアーの逞しさ 青空何の紅葉が何の  
=============================P44=


「色即是色」

鵜戸の海は 凪ぎて見ゆれど轟々と 音立てて岩を洗ひゆくなり
ハナヅルは青く色濃く烏帽子岳 薄の中に埋もれてあり
犬二匹引きて引かれて散歩びと 対岸の土手駆けてゆくなり
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夕立は明快なりきあの雲が ほうら行くぞとあからさまにて
電話の声がさも親しげに話し継ぐ 間違ひなどとはゆめ疑はず
不愛想にただ「はい」とだけ受話器取る 間違ひ電話直後の電話
はて、あなた…? 顔は確かに知れる人 要らぬ話してヒントを探る
柚子浮かぶ湯船に在りて子供のごとく ひとつ掴みて沈めて離す
=============================P46=
ゆく夏や片乳の妻と癌十年 風やや涼し白百合の花
がん友の逝きしと今朝に知らせあり 十年目にて十歳(とを)若くして
母と娘と 常に二人の夕散歩 今日一人なり親子喧嘩と
ブルーベリー植ゑたと言ひて友ははや ジャムの製法ネットで探す (200)
あの髭のむっつり仏頂の禿げ親爺 今日「コンバンワ」だと! 青天の霹靂
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この茶はね “自家用”有機無農薬 安心して と茶農家の友
紳士的テレビの映像 “上品”な 爆撃跡だけが淡々と流る
リゾートと 基地のみ置いとけ植民地 やがて還暦 継子沖縄
いにしへは 能ある鷹は爪隠す いま小雀が舌ひけらかす
目出度しや美し大和の日比谷村 新年惨餓の難民溢る(派遣切り難民村)
=============================P48=
万愚節ホントのことを言ってみな 爆笑取れるぜ 永田町(ながた)の旦那
「限界」を「いきいき」と読ませる超手法 先生中々超文学者
国事をば 公示と言ふと規定あり 酷似してゐる公示と告示
(知事)の脳に幻の椅子(総裁)見えて 返り見すれば故郷(くに)傾きぬ
不景気もどこ吹く風か万事東風 太陽のタマゴ(宮崎マンゴー)は金の御卵
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パソコンよあなたは偉い「外交」を「害行」と解くその聡明さ
釣果あり!メジナ三つ四つ届け来し 友が頭に白きが光る
日々進化 IT 文化の時間軸 目まぐるしくって煩はしくって
常用漢字「僕」と「私」ぢゃ間に合わぬ? ちょっと武骨な「俺」も助っ人
二の腕に 蒼きタトゥーの青年が 車椅子押し 会釈してゆく
=============================P50=
外人さんも上着を脱ぎて汗拭ふ 日向馬ヶ背 春の遊歩道
今日読経 きのふ祝詞の声聞く夜 賛美歌の歌詞ポケットに在り
愛犬家? 自己満足の無頓着? 熱波の午後の舗路引きてゆく
十二社(じゅうにさう))浄水場跡の記事読んでゐる 頭の中の昔の地図で
模様替へ さは言ひながらいつの間にか 掃除片付け手伝はされて
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水枯れの雨待つ庭を夕立が ほんの数秒おちょくってゆく
両の手にバケツぶら下げ水運ぶ ひとつはメタボ遠ざけたくて
瑠璃色の翡翠(かはせみ)すいと飛び立ちぬ 枯れ蓮覆ふ濠の水面より
中々に言葉に出で得ぬ痞(つか)へあり 喉の奥の ほら、あれ、そら、あの…
千歳亭 水琴窟の秘め雫 金の音色(おと)して高く澄みたり
=============================P52=
還暦を同窓寄りて祝ひたり 老と若きと貌(かたち)こもごも
数多並ぶ盆栽卵のサツキ苗 古稀を越えたる兄の鉢棚
ご近所にでも… 実の生り過ぎてと義姉来たり 袋三つ四つ 九年母詰めて
忘るまじ! しっかり認めたメモノート それがまた それ 端から端まで…
カミさんは今日は旅路の肥後玉名 露天の湯の香がやや恨めしき
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梅が枝に目白来て鳴く朝なり 風にその毛を逆立てながら
細雨(ささめ)降る静けき夜をわれと来て 金木犀の甘き香流る
薄桃の曙色してつつじ咲く 人間(じんかん)遠く空の高嶺に
花の名も小難しきが花盛り シンプルな名はまう陳腐ful(チンプフル)
短歌(うた)よりも俳句(く)に傾くと嫗言ふ 言葉増ゆれば愚痴も募ると
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ゆがみひづみ眼向けたら切りが無い 尻向けてゆく精霊とんぼ
エコロジー山葵のチューブもプラマーク ♪洗って洗って洗って回すゥ〜
智も無知も喰らはず呑まず時代の神 ただいたづらに狂気を喰らふ
ノーベル賞 祖国(くに)の技術を誇る君 まつりごとにも風吹かせてよ (240)
米良街道 照葉(てるは)の森のそこかしこ いま咲き盛る山桜花
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菊売りの菊積む車軋ませて 過ぎゆける街 秋昼下がり
皺深くその太き手に菊束ね 菊売る嫗 晩秋の日溜り
ほらごらん君の頭の天辺で 星はすばるが輝いてゐる
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