【馬太伝:第6章】
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 「仏様」 だけでは不公平、という訳でもありませんが、 「因・縁」 だったり 「神様」 だったり と、形は違えどどちらも 深〜い “空”?の上のお話、どこか似たような部分も?と、聖書マタイ伝から。 これも宗教を超えて(…価値観の大きく逆転する一昔前までは…)箴言・格言 とも言うべき、誰でも幾つかは 見聞きしたことがあるであろう特に著名な部分 第6章を置いてみました。

 漢文は中国文献からの寄せ集めですので、記法や用字用法等に統一性を欠く所もあるかもしれません。 また下段の 「訳文」 は、漢文の読み下しではなく新約聖書の当該部分をそのまま充当しましたので、多少意味の異なる部分もありますのでご斟酌下さい。

馬太伝第6章A 【第1〜12節】(書写体演習用 漢文)

 hA(第一〜十二節)h

01 汝勿行汝之義於人前 故令人見。 若然 則不獲汝在天父之
 賞。

汝ら見られんために己が義を人の前にて行はぬやうに心せよ。然らずば、天に在(いま)す汝らの父より報を得じ。

02 故施済時、勿吹角於汝前 似 偽善者於会堂街衢 所為求誉於
 人。我誠告汝、彼已得其賞。(★似≒如。衢≒巷)

さらば施済(ほどこし)をなす時、偽善者が人に崇められんとて会堂や街にて爲すごとく、己が前にラッパを鳴すな。誠に汝らに告ぐ、彼らは既にその報を得たり。

03 汝施済時、勿使左手知 右手所為。

汝ら施済をなす時、右の手のなすことを左の手に知らすな。(★↓矣=置き字)

04 如是則汝之施済隠矣。汝父鑑観於隠、将顕以報汝。

是はその施済の隠れん為なり。さらば隠れたるに見給ふ汝らの父は報い給はん。

05 汝祈祷時、勿似偽善者 喜立於会堂街巷而祈祷 故令人見。
 我誠告汝、彼已得其賞。

汝ら祈る時、偽善者の如くあらざれ。彼らは人に顕さんとて、会堂や大路の角に立ちて祈ることを喜(この)む。誠に汝らに告ぐ、かれらは既にその報を得たり。

06 汝祈祷時、當入密室 閉門祈祷 汝在隠之父。汝父鑑観於
 隠、将顕以報汝。(★當=当)

汝ら祈る時、己が部屋に入り、戸を閉ぢて隠れたるに在す汝らの父に祈れ。さらば隠れたるに見給ふ汝らの父は報い給はん。

07 且汝祈祷時、語勿反復如異邦人。彼以為言多 乃得声聞也。

また祈る時、異邦人の如くいたづらに言を反復(くりかへ)すな。彼らは言多きによりて聴かれんと思ふなり。

08 故汝勿效之。蓋未求之先、汝所需者、汝父已知之。

さらば彼らに效(なら≒倣)ふな、汝らの父は求めぬ前に、汝らの必要なる物を知り給ふ。(★蓋=思うに)

09 是以汝祈祷 當如是云。…『在天吾父、願汝名聖。

この故に汝ら斯く祈れ。『天に在す我らの父よ、願はくは御名の崇められん事を。

10 汝国臨格。汝旨得成在地 如在天焉。(★焉=置き字)

御国の来らんことを。御意(みこころ)の天のごとく地にも行はれん事を。

11 所需之糧、今日賜我。

我らの日用の糧を今日もあたへ給へ。

12 免我之債 如我亦免負 我債者。 (★免≒許)

我らに負債(おひめ)ある者を我らの免したる如く、我らの負債をも免し給へ。

馬太伝第6章B 【第13〜24節】

 hB(第十三〜ニ四節)h

13 勿使我遇試、惟拯我於悪。』…

我らを嘗試(こころみ)に遇はせず、悪より拯(すく)ひ出(いだ)し給へ。』

14 汝免人過、汝在天之父、亦免汝過。

汝らもし人の過失(あやまち)を免さば、汝らの天の父も汝らを免し給はん。

15 汝不免人過、汝父亦不免汝過。

もし人を免さずば、汝らの父も汝らの過失を免し給はじ。

16 又汝禁食時、毋作憂容 似偽善者。彼変顏色 為示人 以己之
 禁食。我誠告汝、彼已得其賞。

汝ら断食する時、偽善者のごとく、悲しき面容をすな。彼らは断食することを人に顕さんとてその顏色を害ふなり。誠に汝らに告ぐ、彼らは既にその報を得たり。

17 汝禁食時、當膏首洗面。

汝ら断食する時、頭に油をぬり、顏を洗へ。(断食の苦を見せず小奇麗にせよ。)

18 如是則汝之禁食 不現於人、乃現於汝在隠之父。汝父鑑観
 於隠、将顕以報汝。

これ断食することの人に顕れずして、隠れたるに在す汝らの父にあらはれん為なり。さらば隠れたるに見給ふ汝らの父は報い給はん。

19 汝勿積財於地。此処有蠧蝕銹壊、又有偷盗穿而窃。

汝ら己がために財宝を地に積むな、此処は虫と錆とが損ひ、盜人穿ちて盜むなり。

20 汝當積財於天。彼処無蠧蝕銹壊、且無偷盗穿而窃。

汝ら己がために財宝を天に積め。彼処は虫と錆とが損はず、盜人穿ちて盜まざるなり。(★蠧蝕=中害。銹壊=錆害)

21 蓋汝財所在、汝心亦必在焉。

汝らの財宝(たから)のある所、必ずや汝らの心もあるべし。

22 夫身之燈乃目也。汝目瞭則全身光。

身の燈火は乃ち眼なり。この故に汝らの眼正しくば全身明るからん。

23 目眊則全身暗。故汝内之光若暗、其暗何其大哉。

されど汝らの眼悪しくば、全身暗からん。もし汝らの内の光、闇ならば、その闇いかばかりぞや。(★眊=暗い。哉=置き字)

24 一人不能事二主。或悪此愛彼、或重此軽彼。汝不能事神又
 事財貨也。

人は二人の主に兼ね事(つか≒仕)ふること能はず。或はこれを悪(にく)み彼を愛し、或はこれを重んじ彼を軽んずればなり。汝ら神と富とに兼ね仕ふること能はず。

馬太伝第6章C 【第25〜34節】

 hC(第二五節〜三四節)h

25 故我告汝、勿憂慮生命 何以食何以飲、勿憂慮身体 何以着。
 夫生命不重於糧、身体不重於衣乎。(★乎=置き字)

この故に我 汝らに告ぐ、何を食ひ、何を飲まんと生命(いのち)のことを思ひ煩ひ、何を着んと身体のことを思ひ煩ふな。生命は糧に優り、身体は衣に優るならずや。

26 試観空之飛鳥、彼不稼不穡 不積於倉(不播不刈不収於倉)
 然汝在天之父 尚養之。汝不更貴於飛鳥乎。

空の鳥を見よ、播(稼)かず、刈(穡)らず、倉に收めず。然るに汝らの天の父は 之(これ≒是≒此)を養ひ給ふ。汝らは之よりも遙かに優るる者ならずや。

27 汝中 誰能以憂慮 加身長一尺乎。(又、延生命一刻乎)

汝らのうち誰か思ひ煩ひて身の丈一尺を加へ(生命の一刻を延ばし)得んや。

28 汝何為衣服憂慮乎。試思野辺之百合花 如何而長、彼不労
 不紡也。

また何故に衣のことを思ひ煩らふや。野の百合は如何にして育つかを思へ、労せず、紡がざるなり。

29 我告汝、當所羅門 於栄華之極、其衣猶不及此花之一。
  (★所羅門=ソロモン)

然れど我 汝らに告ぐ、栄華を極めたるソロモンだに、その装(よそほひ)この花の一つにも及(し)かざりき。

30 且夫野草 今日尚存明日投炉、神猶装之若此。況汝小信者
 乎。

今日ありて明日 炉に投げ入れらるる野の草をも、神はかく装ひ給へば、まして汝らをや、ああ信仰薄き者よ。(★装=粧=服飾)

31 故勿憂慮、何以食、何以飲、何以着。

然らば何を食らひ、何を飲み、何を著んとて思ひ煩らふな。

32 蓋此皆異邦人所求。汝需此諸物、汝在天之父 已知之矣。
  (★異邦人=異教徒。與=与=〜と)

是みな異邦人の切に求むる所なり。汝らの天の父は凡(すべ)てこれらの物の汝らに必要なるを知り給ふなり。

33 汝先求 神国與其義、則此諸物 必加於汝也。

まづ神の国と神の義とを求めよ、然らば凡てこれらの物は汝らに加へらるべし。

34 故勿為明日憂慮、蓋明日之事 明日憂慮之。一日之労苦 足
 於一日矣。

この故に明日のことを思ひ煩ふな、明日は明日みづから思ひ煩らはん。一日の苦労は一日にて足れり。



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【マタイ伝読み下し】


【A(一〜十二節)】
 01 汝ら見られん為に己が義を人の前にて行なはぬやうに心せよ。然ら
  ずば、天に在(いま)す汝らの父より報いを得じ。
 02 然らば施済(ほどこし)を為す時、偽善者が人に崇(あが)められんとて会
  堂や街にて為す如く、己が前に喇叭(ラツパ)を鳴らすな。誠に汝ら
  に告ぐ、彼らは既にその報いを得たり。
 03 汝は施済を為す時、右の手の為すことを左の手に知らすな。
 04 是はその施済の隠れん為なり。然らば隠れたるに見給ふ汝の父は報
  い給はん。
 05 汝ら祈る時、偽善者の如くあらざれ。彼らは人に顕はさんとて会堂
  や大路の角に立ちて祈ることを好む。誠に汝らに告ぐ、彼らは既に
  その報いを得たり。
 06 汝は祈る時、己が部屋に入り、戸を閉ぢて、隠れたるに在す汝の
  父に祈れ。然らば隠れたるに見給ふ汝の父は報い給はん。
 07 また祈る時、異邦人の如く徒(いたづら)に言葉を反復(くりかへ)すな。
  彼らは言葉多きによりて聴かれんと思ふなり。
 08 然らば彼らに倣ふな、汝らの父は求めぬ前に、汝らの必要なる物を
  知り給ふ。
 09 この故に汝らは斯く祈れ。「天に在す我らの父よ、願はくは、御名
  の崇められんことを。
 10 御国の来たらんことを。御意(みこゝろ)の天の如く 地にも行なはれん
  ことを。
 11 我らの日用の糧を今日も与へ給へ。
 12 我らに負債(おひめ)ある者を我らの免(ゆる)したる如く、我らの負債
  をも免し給へ。

【B(十三〜二四節)】
 13 我らを嘗試(こゝろみ)に遭はせず、悪より救ひ出し給へ」
 14 汝等もし人の過失(あやまち)を免さば、汝らの天の父も汝らを免し給
  はん。
 15 もし人を免さずば、汝らの父も汝らの過失を免し給はじ。
 16 汝ら断食する時、偽善者の如く、悲しき面容(おももち)を為(す)な。
  彼らは断食することを人に顕はさんとて、その顏色を害(そこな)ふな
  り。誠に汝らに告ぐ、彼らは既にその報いを得たり。
 17 汝は断食する時、頭に油を塗り、顏を洗へ。
 18 これ断食することの人に顕はれずして、隠れたるに在す汝の父に
  顕はれん為なり。さらば隠れたるに見給ふ汝の父は報い給はん。
 19 汝ら己が為に財宝(たから)を地に積むな、此処(ここ)は虫と錆とが損
  なひ、盗人穿(うが)ちて盗むなり。
 20 汝ら己が為に財宝を天に積め、彼処(かしこ)は虫と錆とが損なはず、
  盗人穿ちて盗まぬなり。
 21 汝の財宝のある所には 汝の心もあるべし。
 22 身の燈火(ともしび)は目なり。この故に汝の目 正しくば 全身明るか
  らん。
 23 然れど、汝の目悪しくば 全身暗からん。もし汝の内の光、闇なら
  ば、その闇いかばかりぞや。
 24 人は二人の主に兼ね仕ふること能はず、或ひは 此(これ)を憎み、彼
  (かれ)を愛し、或ひは 此に親しみ、彼を軽しむべければなり。汝ら
  神と富とに兼ね仕ふること能(あた)はず。

【C(二五〜三四節)】
 25 この故に我 汝らに告ぐ、何を食ひ、何を飲まんと生命のことを
  思ひ煩ひ、何を著んと身体のことを思ひ煩ふな。生命は糧に勝
  り、身体は衣に勝るならずや。
 26 空の鳥を見よ、播かず、刈らず、倉に收めず。然るに汝らの天の
  父は 之(これ)を養ひ給ふ。汝らは之よりも遙かに優るる者ならず
  や。
 27 汝らのうち誰か思ひ煩ひて身の長一尺を加へ得んや。
 28 また何故に衣のことを思ひ煩らふや。野の百合は如何にして育
  つかを思へ、労せず、紡がざるなり。
 29 然れど我 汝らに告ぐ、栄華を極めたるソロモンだに、その服装
  (よそほひ)この花の一つにも及(し)かざりき。
 30 今日ありて明日 炉に投げ入れらるる野の草をも、神はかく装ひ
  給へば、まして汝らをや、ああ信仰薄き者よ。
 31 然らば何を食らひ、何を飲み、何を著んとて思ひ煩らふな。
 32 是みな異邦人の切に求むる所なり。汝らの天の父は凡(すべ)てこ
  れらの物の汝らに必要なるを知り給ふなり。
 33 まづ神の国と神の義とを求めよ、然らば凡てこれらの物は汝らに
  加へらるべし。
 34 この故に明日のことを思ひ煩ふな、明日は明日みづから思ひ煩ら
  はん。一日の苦労は一日にて足れり。
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